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登壇者:広瀬すず、木戸大聖、岡田将生、根岸吉太郎監督
3人の実在した文化人が主人公の映画『ゆきてかへらぬ』の完成披露舞台挨拶が都内で行われ、主演の広瀬すず、共演の木戸大聖と岡田将生、メガホンを取った根岸吉太郎監督が主席してクロストークを行った。当日、大正ロマン香る艶やかな黒の着物姿で登壇した広瀬は、客席の視線をくぎ付けにした。
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本作は、大正時代の京都と東京を舞台に、3人の男女による出口のない壮絶な三角関係と青春が描かれる。『セーラー服と機関銃』、『ツィゴイネルワイゼン』の田中陽造の脚本を根岸吉太郎監督が16年ぶりにメガホンを取って映画化した。
新進女優・長谷川泰子役を演じた広瀬は「撮影は2年ほど前になります」公開が決定し、感慨深い表情で挨拶。「40年以上も前に田中さんの書かれた台本を今のこの時代に生きる我々がどんな解釈をしながらその世界に入っていくのか、ある意味で本当にすごいチャレンジだなと思いました。皆さんがこの映画をどう捕らえるのか興味があります」と撮影を振り返った。
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自身が演じた役について広瀬は「男女の関係性や距離感、全部がすべて新鮮でした」と話し、「それぞれが個々に感じたものを大切にしながら、悩みながらその場で演じている現場でした。3人の関係性が激しく、皆から伝わってくる熱量に疲れました。体力がいりました(苦笑)」と真摯に取り組んだ様子を話した。
広瀬は自身が演じた泰子について「毎日何かを削りながら生きているような女性で、見ていただければ、きっと伝わるんじゃないかなと思います」と話す。さらに、「すごく格好良くて一周回って潔い。気持ちのいい役でした」とにっこり。
不世出の天才詩人・中原中也役を演じた木戸は、相当のプレッシャーがあったことを明かし、「中也という人物は多才な人で、ローラー・スケートなんかも出来るんです。僕は全く出来なくて……」と苦悩の表情。長いマントを着た中也がヒラヒラと舞うように滑る姿にこだわったことを明かす。「根岸監督がギリギリまでこだわってくださったのが良かった」と話す。また、「泰子とはフィジカルなぶつかり合いが多くて、プロレスのような場面もあって体力的にも勝負な役でした(苦笑)」と話す。広瀬は「まるでアクション映画みたいでした」と打ち明けた。木戸はニガテなダンス・シーンに苦労したことも話していた。
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文芸評論家・小林秀雄役を演じた岡田は「たくさんの資料を読みました。文章から色気が溢れていたので、そんな色気が出せるように苦労しました」と話す。それを聞いて広瀬と木戸が「色気出てた~。あったよね!」と声をそろえて伝え、岡田を照れさせた。
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根岸監督は「今は大正や昭和を舞台にした作品を撮る場所がなかなか無い」と嘆き、中也の自宅はセットを組んで撮影したことを明かした。「俳優たちがその場で生きていられるように苦労しました」とこだわりを吐露。瓦屋根が雨に濡れた美しさなど見どころとなっている。広瀬は「衝撃的なセットで素晴らしかった!」と称賛した。
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終盤、青春時代にやりたかったことを披露するコーナーがあり、岡田は若いころから俳優の仕事をしていたので修学旅行に参加できなかったことを嘆いた。
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木戸は「ダンスをやっとけば良かった。リズム感は大切ですよね」としみじみ。広瀬も共感。岡田も「僕は歌とダンスがNG」と話した。
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最近ハマってしまったものを話すコーナーで、広瀬は「ぶりしゃぶ。本当に美味しくて……。最近、すごい量を食べてしまいました(笑)」とすごくハマっている様子。木戸は「巨大な豚のショーガ焼き」。岡田は「毎日2リットルの水」をあげ、「最近の岡田は元気です!」と水アピールをした。
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最後に、根岸監督は「大事に観てやってください」。広瀬は「ゆがんだいびつな愛と青春の物語。皆さんにどんなふうに伝わるのか、観ていただけることへの嬉しさと不安でいっぱいです。ぜひ見届けていただけたら……」とメッセージを送った。
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本作は、第54回ロッテルダム国際映画祭のビッグスクリーンコンペティション部門への出品が決定している。
(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:キノフィルムズ
2025年2月21日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開!