ドキュメンタリー映像作家の山田あかねが監督を務める、ウクライナで動物の命を救おうと奮闘する人々を追ったドキュメンタリー映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』が2月21日(金)より全国公開となる。この度、本編映像とコメントが解禁された。
日本人女性監督が3年間、ウクライナに通うことになった理由。
犬をめぐる一つの事件、《ボロディアンカの悲劇》とは──
ロシア軍に占領された街で、一体何が起きたのか。
映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』は、山田あかね監督が約3年にわたりウクライナに通って取材した「犬と戦争」の記録だ。
2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、その約1ヵ月後に山田あかね監督はウクライナへ入った。取材を進めるうちに、ある動画をきっかけに、ロシア軍に占領された街・ボロディアンカで起きた、犬をめぐる惨劇を知ることになる。そこに映っていたのは、《ボロディアンカの悲劇》と呼ばれる、500匹もの犬たちの無惨な姿だった。
今回は、《ボロディアンカの悲劇》の真相に迫る本編映像を解禁。ウクライナの首都・キーウ近郊にある「ボロディアンカ」は、ロシア軍に2022年2月末からおよそ1ヵ4月占領された。同じく、占領中に民間人が多数虐殺されたブチャに隣接する。アーティストのバンクシーが訪れ、爆破された建物にプーチンを描いたことでも知られる。
事件が起こったのは、犬の公営シェルター。最初に事件の動画を見せてくれたのは、ポーランドの動物愛護団体のメンバー。動画に映っていたのは、夥しい数の犬たちの無惨な姿。その動画に衝撃を受けた山田監督は、真相を知るために3年間、ウクライナに通うことになった。1年かけて動画を撮影した人物を探し出し、シェルターで働いていたボランティア女性たちにたどり着く。
彼女たちは、涙ながらに「500匹の犬が閉じ込められた」と訴える。なぜ、多くの犬が犠牲になり、このような悲劇が起きたのか──。
解禁された本編映像では、山田監督が、虐殺のあったブチャの現在の姿、ミサイルで真っ二つに分断されたアパートの残るボロディアンカ、そして事件が起きたシェルターへと向かう様子が収められている。シェルターの責任者は「私だけが真実を語ることができる」と言うのだが……。事件の真相に迫る様子を、東出昌大が緊迫するナレーションで伝えて行く。
さらに、今回の本編映像に加え、東出昌大のナレーション収録の様子を収めた動画も近日公開予定。配給会社スターサンズの公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCN1R76UB2I_-NZsKKHtSgVg、外部サイト)にアップされる予定なので、ぜひチェックしてみていただきたい。
加えて、本作を鑑賞した著名人からのコメントが到着。山田監督の過去作『犬に名前をつける日』主演の小林聡美や、動物保護活動にも積極的に参加しているミュージシャンの坂本美雨や犬好きで知られる社会学者の上野千鶴子など、各界からの推薦コメントが寄せられた。本作が映し出す戦争という現実、そして動物と人間についての関係を見つめ直すきっかけを与えてくれるだろう。
コメント一覧
小林聡美(俳優)
自分の命は惜しくないという。動物の命を助けることが自分の人生だと。
戦禍の中に分け入って小さな命を救うために自分の命を捧げているひとたち。
戦禍にもかかわらず保護犬を引き取るウクライナのひとたち。
「人間には愛が必要だから」と。
そんなこの世で一番尊いことを、この映画は私たちに語りかける。
空を飛ぶのは戦闘機でなく鳥であれ。地を走るのは戦車でなく犬であれ。
坂本美雨(ミュージシャン)
同じ人間が平然と無差別に虐殺を行う一方で、戦地に真っ先に飛んで行き動物たちを助ける人がいる。
死者数が何万何千と漠然と「数」になる世界で、ウクライナのシェルターで命を落とした犬たち一匹一匹を、泣きながら名前で呼ぶ人たちがいる。
一人一人、一匹一匹に名前があり、誰かを愛し、愛された命だったということが新たに心に刻まれ、私たちを突き動かす。
上野千鶴子(社会学者)
戦地や被災地で、危険をかえりみずペットを救うという無償の活動をする人々がいる。なぜなら、ペットは無償の愛と信頼を人間に寄せてくれるからだ。
それにしても、なぜ、日本の被災地ではペットを連れた避難ができないのだろう? ペットも大切な家族の一員だというのに。
片野ゆか(ノンフィクション作家/「犬部!北里大学獣医学部」)
戦争により行き場を失った動物たちの命を救うことで、実は戦争により傷ついた人々が救われている──その事実に心震えた。既存のニュース映像やSNSでは目にできない、強烈な愛と生命力がつまった映画。
杉本 彩(俳優)
戦争で犠牲となるのは人間だけではない。人間が起こした戦争によって、動物も苦しみ、無惨に命を落とす。テレビメディアが伝えることのない、動物の犠牲がある。その死を悼む人々と、命がけで動物を救う人々の、尊い活動と勇姿に胸を打たれる。なぜ動物を救うのか、その大切な意味と価値を知ってほしい。
常喜寝太郎(漫画家/「全部救ってやる」)
動物はだいたい被害者だ。
人命が優先されるのは仕方ないかもしれない。
けど犬も心に傷を負う。
“かわいそう……”で終わってた先の一歩、自分に何ができるかを考えていきたい。
命の価値をあげるのも、動物を守れるのも人間であることを、この映画から考えていきたい。
佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
犬の視線を通して、悲惨な戦禍や人間社会の苦しみが浮き彫りになってくる。生き抜く犬たちの姿は、まさに人間社会の鏡像なのだと感じた。
岡部芳彦(ウクライナ研究会 会長)
この映画は、大きな流れを止めることは難しい中でも、身の回りの命を救うことを諦めなかった人々の物語である。またその人々に向き合ったさまざまな境遇の犬たちの物語でもある。その事実は、このロシア・ウクライナ戦争の中の出来事の一つとして、多くの人の記憶に留められるべきだろう。
エリザベス宮地(映画監督)
映画の中に写る動物の中で、人間だけが悪魔に見えて、天使にも見えた。
きっと、その両者が個人の中に共存しているのが人間なんだと思います。
「自分の命が危険でも動物を救いたい。私の生きる理由なんだ」
戦場で動物の救出活動を行なっている元兵士トムの言葉。
ただただ両者の間で右往左往するのではなく、自身の生き方を選ぶことができるという可能性に唯一の希望を感じました。
吉田大八(映画監督)
自らの生命をギリギリまで危険にさらして犬を救う人たち、それを記録して、誰かに届けようとする山田さんの熱量にひたすら圧倒されながら、その熱に反応する回路はいったい自分の中にあるんだろうか、とまた自分のことばかり考えていました。
自分と、犬との距離。
ウクライナとの距離。
ガザとの距離。
解雇されたシェルター所長との距離。
自分ごとにできるのって、距離だけの問題なのだろうか。
でも、知っている山田さんがウクライナで動いている姿には、自分にとって、これまでに観たどのニュース映像とも違うインパクトがありました。
きっとこれも距離ですね。
届くべき人に届きますように。
斎藤 工(俳優、映画監督)
動物と人間が共存することは、結局のところ人間側の都合なのかも知れない。
災害時や戦争と言う有事の折に、当たり前に優先されず皺寄せを受ける動物たちの姿に、自分を含む“人間”と言う生き物の哀しき本質を見てしまう。
しかしその戦時下にも関わらず、自身の危険を顧みず戦地にて動物を救おうとする人たちがいる。
山田監督を介し彼ら彼女らの存在や活動を知れたことは、動物を愛する者として、人間として、希望でしかない。
果たして自分には何が出来るだろう。
それを具体的にしたいと強く思った。
遺言を書いて戦地に赴き、命懸けで本作を作った山田あかね監督。
心から尊敬いたします。
公開表記
配給:スターサンズ
2025年2月21日(金)より全国公開
(オフィシャル素材提供)