映画『ゆきてかへらぬ』が、2月21日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開となる。
「文化の百花繚乱」の様相を呈した大正から昭和初期を舞台に、実在した男女3人の壮絶な愛と青春を描いた本作。脚本は『ツィゴイネルワイゼン』や『セーラー服と機関銃』の田中陽造が40年以上前に書いたもので、多くの監督たちが映画化を熱望しながら長い間実現することができなかった、いわば“知る人ぞ知る”幻の脚本。「滅多にない優れたシナリオ」とこの脚本に焦がれ続けていた名匠・根岸吉太郎監督が16年ぶりにメガホンを取り、美しい時代を火花散らすように駆ける3人の男女を演じるのは広瀬すず、木戸大聖、そして岡田将生。まさに日本映画の“夢の企画”が動き出した。
第54回ロッテルダム国際映画祭コンペ部門に正式出品
オランダ第二の都市ロッテルダムで開催中のロッテルダム国際映画祭は、世界三大映画祭に次ぐ重要な映画祭のひとつ。今年は1月30日~2月9日(現地時間)に開催されており、『ゆきてかへらぬ』はビッグスクリーンコンペティション部門正式出品作品に選ばれた。本作がノミネートされたビッグスクリーンコンペティション部門は、一般の映画ファンから選ばれた審査員によってアワードを選出し、受賞作はオランダでの公開やテレビ放映も見込まれるという画期的な部門。今回の上映が海外初上映となった。現地時間2月5日に『ゆきてかへらぬ』の上映が行われ、根岸吉太郎監督が舞台挨拶に登壇し、Q&Aが行われた。
オーディエンスの大歓声に根岸監督は「この映画祭に参加できて光栄ですし、非常に誇りに思います」と感謝の言葉と共に深々としたお礼で答えた。前作『ヴィヨンの妻』(09)以来、約16年ぶりの新作となる本作。前作同様、中原中也という日本の文豪にまつわる物語を創作した理由について聞かれた根岸監督は「詩人の中原中也は日本では大変有名な詩人で、この映画の中でも何度も”天才”と言われていますが、確かに非常に敬愛されている、日本人にとっては大切な詩人です。ただ、本作は彼が詩人として素晴らしいということを描いているわけではなく、才能あふれる詩人・中也、そして彼の才能を誰よりも認めていた評論家・小林、そして一人のミューズ(泰子)。ただ何かになろうと思っている10代20代という若者たちの愛と格闘と葛藤を描いた話なんです」と主人公が誰であれ本作が誰もが通る青春の葛藤と愛を描いた作品だとアピール。
また、主人公の中原中也が行動や態度ではなく詩を通して感情を表現している描写について「中也は8歳のときに自分の弟を亡くしているんですね。その幼いときの哀しみっていうのを、ずっと抱えながら生き続けたんだと思います。死もそうですけども、何かを失うということに、彼は非常に敏感で。彼はこの悲劇をバネに詩を紡ぎ出すんですね。言葉上は暗いわけではないんだけど、そういった哀しみみたいなものを称えているポエットなんだと思います。と、中原中也をこよなく愛する監督ならではの中也像について語った。
そして、感動で涙ぐんだ外国籍の若い女性から、2人のアーティストから愛されることによって、あどけない少女から大人の女性へ変貌していく長谷川泰子の成長について聞かれると「この3人の奇妙な関係っていうのかな。特に泰子が中也のもとを去ってしまっても、彼はずっと彼女にこだわって追い続ける。追い続けるっていうことが彼の中で愛を確かめる行為だったと思います。でもその行為が泰子にとっては、また独特な。それを受け止めたいという気持ちと、拒否したいという気持ちが同時に表れてきている。それが彼女のいろんな苦悩の要素の一つになり同時に女性として変わっていった要素だったと思います」と語り、さらに「3人の中でも、この映画のタイトルが英題では「Yasuko Songs Of Days Past」と言っているように、映画は基本的には泰子という女性が2人のアーティストをどう受け止めていたかということを描きたかったんですよね。この話はトータルで15年ぐらいの話なんです。泰子の生き方は20代から、そのシーンごとに変化していく。この映画の中で一番見てほしいなと思っています」と一筋縄ではいかない男女3人の織りなす歪な関係と主人公・泰子の魅力について熱く語り、イベントは大盛況のうちに幕を閉じた。
映画『ゆきてかへらぬ』は2月21日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開!
公開表記
配給:キノフィルムズ
2025年2月21日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開!
(オフィシャル素材提供)