![](https://www.cinema-factory.jp/wp-content/uploads/2025/02/675262328e754c18d542bf6d7e4de1cb-1024x683.jpeg)
登壇者:山田あかね監督、セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使
MC:伊藤さとり
2月21日(金)より公開となるドキュメンタリー映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』の完成披露試写会が都内ホールにて開催され、上映前の舞台挨拶に山田あかね監督が登壇した。
2022年2月24日に始まったロシアよるウクライナ侵攻から約1ヵ月後には現地に赴き、約3年に渡り取材を続けた山田監督は、完成披露試写会という日を迎え、「最初は映画を撮ろうと思って行ったわけではなく、とりあえず撮影しようと決めて行きました。3年が経ち、映画が完成して“嬉しいです”と言ってしまうと、今も戦争が続いているので素直に“嬉しい”とは言えないのですが、完成した映画を皆さんに観ていただけたらと思います」と映画の完成を喜びながらも葛藤する気持ちを語った。
![](https://www.cinema-factory.jp/wp-content/uploads/2025/02/5da77851a724b529abcace699d40ead4-1024x683.jpg)
そして今回、駐日ウクライナ大使を務めるセルギー・コルスンスキー氏が本作の応援に駆けつけた。すでに本作を鑑賞している大使は、観客へ向けてウクライナの現状を交えこのように語る。「本日は、この映画の上映会にお集まりいただきありがとうございます。この映画は、実は鑑賞中に辛い気持ちになる部分もあります。皆さんがご存知の通り、ロシアがウクライナに対して戦争を仕掛けてから、3年が経とうとしております。もちろん多くの被害を受けているのは罪のない民間人ですが、彼らと同様に、彼らが飼っている動物たちも被害者であります。そして実際に何が起きていたかを世界に知らせるために、山田あかね監督が勇気を持って、ウクライナやポーランドに取材に行きました。ウクライナで動物を助けようとさまざまな活動をしている人がいる中、ロシア軍は動物たちを殺すこともありました。日本でペットを飼っている人は非常に多い。そして、ペットの誕生日をお祝いする家族もいます。私も大阪出身の犬を飼っていますが、もうすぐ3歳を迎えるので、誕生日を祝おうと思っています。犬を飼っている人として、動物が好きな人として、涙を流しながらこの映画を観ました。この戦争がどれだけ大変なものなのか、どのようなものが悪と言えるのかを理解するためには、本作のような映画を観る必要があると思います」と、戦争に対する悲痛な思い、そして動物への愛という、二つの大きな感情を表すスピーチを披露し、会場からは拍手が湧き起こる。
![](https://www.cinema-factory.jp/wp-content/uploads/2025/02/3b5fdbdc209a38cc745d27f33a9b5042-1024x683.jpg)
そして、大使の言葉に対し山田監督は「ありがとうございます。3回ウクライナに行った中で、現地の人たちといろんな話をしたり、近くでミサイルが落ちることもあり、本当に大変なことになっていると身をもって理解しました。私が撮ったのは犬の話なので、そこまで人間の苦しみを描けたか分かりません。でも、動物たちも大変な思いをしていることは、大きな歴史の中でも忘れ去られてしまうような出来事かもしれませんが、なかったことにはしたくないので、この映画を作らせていただきました。大使も犬が大好きということですが、私も犬が大好きです。犬が被害に遭うのがとても心苦しいので、そうならないよう本作を作りました」と感謝を伝えつつ、本作にかける覚悟の思いを述べた。
山田監督自身のキャリアについて、犬や猫の命をテーマにした作品を撮ろうと思ったきっかけを聞かれ、「私は犬がとても好きで、犬が死んでしまった時にとても悲しくて他の事ができなくなった。でも、死んだ犬のことを嘆いていても仕方がないので、これから助けられる命をテーマに作品を作ろうと思ったことがきっかけです。うちの犬が亡くなったのが2010年なので、15年ほどこのような活動が続いてますね」と答える。
続けて、本作の製作から撮影・完成までを振り返ることに。まず、戦時中のウクライナに行こうと決意したきっかけについては、「2011年の東日本大震災の時に、原発の20キロ圏内に入って取材していたこともあり、被災地や災害時に動物がどのような状況に置かれるのかを10年ほど取材してきました。今回は戦争なので、どうしても人間が優先で動物の命は後回しになるだろうと考えました。それと同時に、現地の人たちは動物を置いて逃げたりするのだろうか、一緒に逃げることはできるのだろうかと、そういうことを知りたいと思ったんです」と答え、これまでの経験と繋がる理由を明かす。
![](https://www.cinema-factory.jp/wp-content/uploads/2025/02/7f24730b8ab1fc91a17851b684c2a61f-1024x683.jpg)
そして、実際にウクライナでの取材で大変だったことを振り返り、「撮影中に泊まっていたホテルの近くにミサイルが落ちました。それは昨年の7月のキーウの小児病院でのことです。ダムが決壊して水害が起きたヘルソン市では対岸にロシア軍がいるという前線まで行くこともありました。すごく大変なことですが、自分が激烈に被害を受けたというわけではないので、本質的に大変な出来事ということはあまりありませんでした。どんな街に行っても、“よく撮影しにきてくれた”、“世界にこのことを伝えてくれ”、“自分たちがどんな被害に遭っているが伝えてくれ”と撮影を歓迎してくれたんです。“私は犬猫を撮りにきただけで、報道のジャーナリストではないんです”と伝えても、“犬猫を撮りにこんなところまで取材に来てくれてありがとう”とハグしてくれるんです。だから、大変なことより温かい思い出の方が印象深いです」と答え、現地の人々の温かさに触れたエピソードを明かす。
さらに、現地の犬たちの様子について聞かれると「近くでミサイルが落ちたシェルターがあったのですが、そこではやはりショックで亡くなってしまう犬もいました。あと、猫は数日で野生化しやすいようで、森の中で蛇をくわえて走り回っていたりと、人間がいなくても生きていく生き物の強さがあるようでした。反対に犬は人間を待つので、戦地などに行くと車の音で人間だと分かると寄ってくるんです。フードがあるとさらに喜んで集まってくるんです。ご飯があって、寝るところがあって、今日生きてるから幸せだ、というところに動物の生命の強さを感じました。人間が戦争に遭って大変な思いをしているときに、生きている犬の飛び跳ねている姿を見て気持ちが楽になったりするので、そのような基本的な部分を犬から教わっているような気がします。動物を救っている人たちは、動物を救う分、動物からの救われているんですよね」と語り、動物と人間の関係性について、取材を経ての学びを教えてくれた。
そんな本作を通して、どのようなことを伝えたいかと聞かれ、「犬や猫など小さな命を助けたいと思う気持ちは全世界共通だということがまず一つです。そして、本編の冒頭では衝撃的な映像が流れます。私はこの映像をなかったことにしたくないと思ったのでこの映画を撮ったわけですが、戦争の中で人間が受ける大きな被害というのは歴史に残りますが、動物などの小さな命はおそらく忘れ去られてしまいます。せめて、私は覚えていようと思うし、映画を観た方にも覚えていてほしいです。そして最後に、もう一つ何かできることとしたら、ウクライナの動物のために寄付をするなど一歩踏み出していただけたら、世界は少し良くなるんじゃないかと思います」と熱い思いを語る。
![](https://www.cinema-factory.jp/wp-content/uploads/2025/02/c7d25006107469075d3d094b31eee3c2-1024x683.jpg)
![](https://www.cinema-factory.jp/wp-content/uploads/2025/02/843e86e4a62652353c3e4954d0b0f8b7-1024x683.jpg)
さらに、本作の公開に合わせて、山田監督からクラウドファンディングは開始することが発表された。動物好きとして知られる俳優の石田ゆり子氏と一緒に動物愛護団体「ハナコプロジェクト」を運営しているが、あらたに映画本編で紹介されているウクライナの動物愛護団体ために寄付を募るという。この活動について「現場での取材を続けていると、取材をしてテレビで放映するだけで良いのかという気持ちになり、自分でも助けられないかと思ったんです。それで支援団体を作って、日本の保護犬・保護猫の医療を無料で提供するという仕組みを作りました。この3年で4000匹くらいの犬猫に届けることができました。今回は、ウクライナの動物を助けるためにあらためにクラウドファンディングを開始しました」と報告し、観客へも協力を仰いだ。
最後の挨拶では、「たくさんの人に映画を観ていただきたいです。そして、どうしても戦争が始まった時は多くのメディアが取り上げるので皆さんウクライナのことを心配していましたが、3年が経ちメディアでの扱いが減るとみんなも忘れてしまうんですよね。でも、世界ではまだ戦争が続いているということを知ってもらいたいです。毎日考えるのは大変かもだけど、たまにはそんな国のことを考えてもらえたらと思います」とウクライナへの想いを語り、会場からの温かな応援のもと舞台挨拶を終了した。
クラウドファンディングについて
舞台挨拶内で山田あかね監督から発表があった通り、ウクライナの動物(主に犬と猫)のためのクラウドファンディングが開始された。今回の支援は、映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』内でも紹介されている動物愛護団体「フボスタタ・バンダ」と「ブレイキング・ザ・チェイン」に寄付されるこにとなる。映画公開と合わせて注目いただきたい。
ウクライナ侵攻から3年──いまだ続く戦地の犬猫救援活動にご支援を
ウクライナの犬と猫のためのご支援を募ります。本クラウドファンディングで集まったご支援は、キーウの動物愛護団体「フボスタタ・バンダ」と「ブレイキング・ザ・チェイン」の2団体にお送りいたします。2団体には、戦地で動物を救うためにかかる費用や、救助した動物たちのフードはじめ、シェルター運営にかかる費用、海外へ動物を運ぶ費用などに活用していただきます。
■第一目標金額:300万円
■「READY FOR」活動概要ページ:https://readyfor.jp/projects/UA_animal(外部サイト)
■プロジェクト実行責任者:山田(遠田)あかね(㈱スモールホープベイプロダクション)
■プロジェクト実施完了日:2025年6月30日
※ いただいた支援で行うことができた活動内容については、責任を持って活動報告などを通じてご報告いたします。
※ 寄贈先となる「フボスタタ・バンダ」「ブレイキング・ザ・チェイン」より、支援金をお送りすることについて同意をいただいております。
※ 支援金をクラウドファンディングで集めることに関しても同意をいただいております。
![](https://www.cinema-factory.jp/wp-content/uploads/2024/11/inutosensou_poster_s-725x1024.jpeg)
公開表記
配給:スターサンズ
2025年2月21日(金)より全国公開
(オフィシャル素材提供)