
配偶者が3年以上生死不明の場合、離婚訴訟を経て離婚ができる。
不在者の生死が7年間不明な場合、失踪の宣告をすることができ、死亡保険金受取人は保険金を受け取ることができる。
この法的事実を元に、ストレイテナー、柴咲コウ、the pillows、秦 基博、真心ブラザーズ、°C-ute、アンジュルムなど約900本のMVやライブビデオ、CM、アニメーション、ドラマ、短編映画を監督してきた小嶋貴之が、モラルぎりぎりのグレー・ゾーンで己の弱さの故に追い詰められていく男の姿を描くサスペンス映画を制作。
そのクオリティの高さに、感情を沸き⽴たせる日本の短編映画だけをラインナップする配信サービス「ジーンシアター」が初めて映画配給に乗り出し、セレクションに定評があるテアトル新宿での公開が決定している!
不倫相手と共に妻の元夫の保険金を使うことを目論む夫・持田孝明役で卯ノ原圭吾が、失踪から6年半経ち、保険金受け取りまで半年に迫ったタイミングで元夫に瓜二つの男に遭遇し、うろたえる妻・持田佳奈役で斎藤千晃が、自分だけを愛して欲しいという一心で、孝明を振り回す岸本あゆみ役で実倉萌笑が出演。
元夫に瓜二つの男「倉田」役で宮本聖矢、倉田が働く居酒屋の店長役で米元信太郎が出演し、孝明を追い詰めていく。
その他、孝明とあゆみの起業仲間役で、小幡貴史、松本 響、島林瑞樹、佳奈のバイト仲間役で八木亜希紗、佳奈がバイトするネットカフェの店長役で鐘ヶ江圭太、保険の外交員役で佐藤達也が脇を固める。
この度、3月28日(金)よりテアトル新宿及びMOVIE ONやまがたにて、4月12日(土)より横浜シネマ・ジャック&ベティほか全国順次公開されるのを前に、小嶋貴之監督のオフィシャル・インタビューが届いた。
脚本のインスピレーションはどこから得たのでしょうか?
人がいなくなったり別れるたりすることは、人生の大きな出来事だなと思っています。僕はリアリティのある物語が好きなので、調べていくうちに、「失踪宣言」という制度を知りまして、これを使ったら、面白いミステリーが作れるんではないかと思いました。
ほとんどのキャストとスタッフは「Sprocket holes Japan」(通称:スプロケ)というコミュニティで出会ったそうですが、スプロケの存在は本作にどのような影響を与えましたか?
どんな芝居やどんな人柄というのを知らないとお願いできないので、本作では、基本的には知っている役者に声をかけました。スプロケでは2ヵ月に1度イベントがあって、人柄を知っている人たちばかりなので、キャストを集めやすかったです。2ヵ月に1度、5分位の脚本を4人位の監督が、撮影時間1時間位で撮るというワークショップをやるんですけれど、人を演出することはどういうことかというのを何度もやることによって改めて感じることもあって、勉強になります。MVは、役者さんを使うこともありますが、お芝居はあってもそんなに深く話したりはしないので、悪い言い方をすると上っ面の表現になってしまうし、音が使えないから、どうしても芝居が大きくなったり分かりやすくなるので、表現として捨てているところがあると思うんです。本作では、そこを、ちゃんとお芝居を演出することで意識して作り上げることができました。
各キャストのキャスティング理由をお教えください。
主人公の孝明役の卯ノ原圭吾さんは4回位ご一緒していて人柄がわかっています。頭がいいし耳もいいし、表現力もあるしお芝居も上手いんですけれど、どこか人的に抜けているところがあって親近感を感じていて、この人だったら、自分の想いを託したら、自分が思ったように表現してくれるだろうなと思って頼みました。
主人公の妻・佳奈役の斎藤千晃さんは、安定したお芝居ができる方で、安心材料も込みで、お願いしました。彼女に卯ノ原さんとかが大きくとぼけた芝居をしても、彼女の確実な芝居で現実に引き戻してくれるというイメージがありました。
孝明の不倫相手・あゆみ役の実倉萌笑さんとは今回が初めてだったんですけれど、ぱっと見かわいい女の子なので、最初用意した全然別の脚本の妹役のイメージで声をかけました。後に、その脚本ではやらなくなって、あゆみ役になりました。彼女は正直ぱっと見あゆみ役と違うので、できるのかなと思っていたら、実倉さんから、「あゆみ役、頑張ります」と猛プッシュされて、ここまで言うのなら、この子と心中してみようと思いました。インまで2ヵ月位あったのですが、リハを5回位やって、スプロケでも会う度に、「私のこういうところがあゆみだと思いました」「自分にこういうあゆみの部分を見つけました」と常に報告してくれて、役に向かって真摯に向き合っていることが分かりました。リハーサルで芝居をしてもらったら、その成果が出ていて、僕が思っていた役を超えたあゆみを作ってくれたので、心中せずに、上手い形になったと思いました。
孝明とあゆみの起業仲間役の小幡貴史さんは、元自衛官なんですけれど、その肩書き通り、しっかりした真面目な人なので、リーダーにピッタリだと思いました。松本 響さんは、本作で美術もやってもらっているんですけれど、いろんなことに興味を持っている方で、このベンチャー・チームの2番手で、「アーティスティックで自由度も高いけれど、ちゃんと仕事もこなす」というイメージにぴったりだったので、お願いしました。島林瑞樹さんは、映画のままのイメージで、ずっと不安に思っているし、常に自分は大丈夫かと模索している人で、弱い部分を平気で見せるチャーミングさがあって、この役に合うと思いました。
佳奈のバイト仲間役の八木亜希紗さんは、斎藤千晃さんに挙げてもらったんです。ご本人がどうかは分からないですけれど、サバサバしていて、不安を抱えながら過ごす佳奈の対照としていいと思ってお願いしました。佳奈がバイトするネットカフェの店長役の鐘ヶ江佳太さんはダンディでかっこいいんですけれど、どこかとぼけてるんです。漫画をいっぱい持たせるだけでも面白いので、女子二人にいじらせたら、何もしなくても面白いシーンになると思ってお願いしました。保険の外交員役の佐藤達也さんは、僕のイメージは役と同じく実直で真面目な方。設定の説明をしなくてはいけないファースト・シーンだったので、ピッタリでした。
佳奈の元夫に瓜二つの男「倉田」役の宮本聖矢さんは、好青年なんですけれど、結構熱い人で、嫌味もない。無色無臭みたいな感じがこの役にピッタリだと思って選びました。倉田が働く居酒屋の店長役の米元信太郎さんは、クセがあって面白い。キャリアも長くて、アクティング・コーチもされていて、引き出しが多い方なんです。どんなことを相手がしても、場面が面白く魅力的になるようにまとめてくれるだろうと思ってお願いしています。
佳奈はフリーターで、1000万円を夫に渡す余裕はないように見えますが、どのような設定なのでしょうか?
ギリギリ生活はやれているし、仕事というか起業しないと生活が立ち行かないという設定です。
孝明と一緒に起業する3人ですが、島林さん演じる山本が資本金の準備に苦労しているという設定も絶妙だと思いましたが、その設定にした理由をお教えください。
主要3人の物語だけじゃなくて、各キャラクターに人生があると思っていて、その片鱗を見せたいと思ってそういう設定にしました。またお金に対する不安が伝染するさまを見せたいなとも思いました。
本作の見どころはどこだと思いますか?
「失踪宣告」という聞き慣れない言葉・制度があって、そこが僕は面白いなと思っています。本当に死んだか確認していないのに、死んだ扱いをされる。強引に死亡と決めつけてしまうという制度の仕方なさと違和感が面白いと思ったんです。その制度を悪用する人もいれば、すがる人もいる。あやふやなものにすがったり悪用する人がいる価値観がある世界を、サスペンスというテンポのいいエンターテインメントで感じてくれたら嬉しいです。
映画祭での反応はいかがでしたか?
北海道国際映画祭では観客賞をいただきました。シネフィルや映画マニアというよりは、普通の一般の方が来てくれる映画祭なのですが、そういう方が「面白かった」と声をかけてくださったので、映画にそんなに興味がない人でも楽しめる映画になっているなと思いました。
テアトル新宿で公開されると聞いた時は、どう思いましたか?
50席位の映画館で十分だと思っていたので、驚きました。テアトルは歴史もありますし、僕も好きな映画館なので、すごく期待されていると、今からビクビクしています。
読者にメッセージをお願いします。
この映画は、隅々までこだわっています。例えばある人とある人が鏡に映った形で話していたりするんです。そういうことがどういうことを意味するかや、劇中の画面上のアイコンなど、大きい画面で観た方が、隅々まで見られるし、伝わると思います。ぜひ闇の中で大きいスクリーンで観ていただけると幸いです。

公開表記
配給:ジーンハート
3月28日(金)よりテアトル新宿ほかにて全国順次公開
(オフィシャル素材提供)