
登壇者:広瀬すず、杉咲 花、清原果耶、土井裕泰監督
映画『片思い世界』の完成披露イベントが東京・TODAホール&カンファレンス東京で行なわれ、舞台挨拶に広瀬すず、杉咲 花、清原果耶、土井裕康監督が登壇してクロストークを繰り広げた。イベントには劇中に登場する杉並児童合唱団も参加して主題歌の『声は風』を澄んだ声で歌い上げ、会場を魅了した。

本作は、『花束みたいな恋』の脚本で知られる坂元裕二と土井監督がタッグを組んだ作品。現代の東京の片隅、古い一軒家で一緒に暮らし、強い絆で結ばれた美咲(広瀬)、優花(杉咲)、さくら(清原)、3人をトリプル主演に迎えた希望の物語。12年一緒に暮らし、強い絆で結ばれているそんな彼女たちの、誰にも言えない“究極の片思い”が描かれる。
2年ほど前に撮影された本作。撮影時を振り返り、広瀬は「この作品が決まってから3人で一緒に食事に行きました。あの日から2年が経ちました。この2年間ずっと心の中にあった作品です。この作品を早く届けたかった……」と溢れる思いを伝える。

杉咲は「映画がお客さんのもとに届くと思うと感慨深いです。最初にお話をいただいたのが3年とか4年前で、こんなに素敵な作品に参加できて、素敵な方々とご一緒できて、とても感慨深い思いです」と喜びをかみ締める。

清原も「公開を迎えて、じんわりと胸が温まってきました。今日ここに立てていることが嬉しいです」と笑顔で話した。

土井監督は「2年前に撮影が始まりました。いろんな思いがこもった作品になっています」と感慨深い面持ちで挨拶。キャスト3人について、土井監督は「気がつくと、いつも3人が一緒にいるんです。3人がいるときの幸福感がすごいんですよ! 画面を見ていて 幸せな気持ちになります。そして、3人が生き生きすればするほど切なくなります。それぞれがすごく難しい役でしたが、ちゃんと生きてくれました。3人が一緒にいることで、ものすごく強い力が生まれる映画になっています」と伝えた。そして、「主人公の3人は12年間一緒に暮らしているんですけど、その時間を3人が埋めようとしているんだなと思って見ていました」と話した。

自身の役作りについて、広瀬は「私は長女みたいな立ち位置にいて、とにかく2人が笑ってくれていたらいいなと、家族のいろんな存在になれたらいいなと。楽しくて愛おしい2人を見ているだけで幸せでした」と話した。そして「柄にもない料理をするシーンがあって、キッチンにいると、ふたりが寄ってきてくれました」とにっこり。

杉咲は「優花はユニークで自分のリズムを持っています。いろいろなことに対して興味が溢れていて、誰も足を踏み入れていないところに向かって自ら突き進むパワーも持っています」と役柄を分析。また、「ずっと3人で一緒にいたので、クランクアップしてその日常がなくなったときに、幻だったのか……と思うくらいの喪失感がありました」と話した。

坂元が紡ぐ世界に参加した3人。「本作のどこに坂元裕二らしさを感じたか?」という質問に、
ドラマ「anone」で坂元とタッグを組んだことのある広瀬は「どこを切り取っても坂元さんのワールドが広がっています。3人の会話のシーンのリズムとか、怒る原因とかにクスッとなります」と伝える。
ポジティブなパワーを持っている、優花を演じた杉咲は「3人のたわいもない話をしているシーンが淡々と描かれているのですが、その中でザワッとさせられる、生ぬるい風を感じていました。過ぎ去ったあとに、こんな空気が通ったような気がするみたいな、そんな味わいが坂元さんの世界なのかなと思いました」と話す。また、杉花は、自身の役が抱えている重い問題をしっかり表現できるか大きなプレッシャーだったことも明かしていた。

清原は「私は、以前『花束みたいな恋をした』に出演しました。再び坂元さんの世界に浸れるんだという嬉しさがありました。次はどう生きられるんだろうという好奇心が強かった。坂元さんの脚本は、言葉の温度感、質感によって、日常と非日常があいまいになってゆらゆらと揺れている感じが好きです」と話した。

また、自身が演じたさくらについて清原は、「とにかく美咲と優花のことが大好き。誰かを思う気持ちが全部優しさに還元されるとこういう作品になるのかなと思います。映画を観て感じたことが、誰かを優しくするための行動になっていただけたら……」と作品に込めた思いを話した。
終盤、杉並児童合唱団の生歌『声は風』が披露され(坂元が作詞した楽曲)た。キャスト陣はソファに座って見守った。

杉並児童合唱団の生歌唱を真剣な表情で歌声を聴いていた広瀬は、「撮影時のことが一気に蘇ってきました。ピュアな歌声を聴いて、いまやられています……。泣きそう」と感激ひとしおの様子で、「自分たちの役に重なり、いろんな感情、世界に連れて行ってくれた」と絶賛。杉咲も「心が浄化されました」。清原も「胸がいっぱいって、こういうことを言うんですね」とそれぞれが感激の面持ちだった。

最後に、土井監督は「間違いなく3人が輝く瞬間がスクリーンに焼き付けられています。楽しみに待っていてください!」。清原は「この映画が、観る人の“片思い”を優しく包んで、前に進ませてくれるきっかけになればと思います」。杉咲は「人は自分が見たいように誰かを見てしまう瞬間があります。この映画は、そういうことに対して立ち止まって考えさせてくれる。そんな力を分けてくれるような作品になっています」。広瀬は「3人が演じた“片思い”は、色や形は違いますが、3人それぞれの“片思い”を最後まで見守っていただけたら……。愛らしくて、温かくて、切ない映画になっています」とメッセージを伝えて、イベントは終了した。


(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:東京テアトル、リトルモア
2025年4月4日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開