
登壇者:井上真央、⼩野寺ずる(俳優/⽅⾔指導)、佐藤順⼦(プロデューサー)、岸 善幸(監督)
第37回東京国際映画祭ガラ・セレクション部⾨招待作品として選出された、映画『サンセット・サンライズ』(公開中)。この度、本作のメインロケ地となった気仙沼での舞台挨拶が3⽉15⽇(⼟)に開催され、井上真央、⽅⾔指導を担当した⼩野寺ずる、プロデューサー佐藤順⼦、岸 善幸監督が上映後の舞台挨拶に登壇した。
現在全国公開中の映画『サンセット・サンライズ』が、メインロケ地である宮城県気仙沼市で行われた特別上映合わせて、凱旋舞台挨拶が開催された。登壇者には岸 善幸監督、ヒロインを演じた俳優の井上真央、気仙沼市出身の俳優で本作品の方言指導を担当した小野寺ずる、プロデューサーの佐藤順子が揃った。
15日は2回上映が行われ、1000人キャパシティの会場は両回とも満席。訪れた気仙沼市民に対し、岸監督は「皆さんの日常で目にしている風景は、僕らからするととても美しく、気仙沼の人が日常で食べている食べ物は、本当においしい。映画を通して、皆さんのいる場所の魅力を改めて感じてほしい」と力を込めた。
井上は撮影時を振り返り「気仙沼の皆さんには大変お世話になりました。ようやく皆さんに観ていただけることを嬉しく思います」と語り、先日山林火災で大きな被害を受けたもう一つのロケ地、岩手県大船渡市に対して「同じくロケ地でお世話になった大船渡市の皆さん。ニュースを見て心を痛めるばかりですが、大船渡市の皆さんにも1日も早く穏やかな日常が戻ることを願っています。いつかこの映画を観ていただき、感謝の気持ちを直接伝えたい」と思いを寄せた。
気仙沼出身の小野寺は「地元で撮影された作品に関われたこと、こうして舞台に立たせていただいていることが本当に光栄です」と感慨深げ。井上が横から「今日はお母さんも観に来てるんだよね?」と尋ねると、小野寺が「母は午前の上映に来ました(笑)。午後の上映には友達と、お兄ちゃんの奥さんが来ています(笑)」と答え、会場はあたたかな地元感あふれる雰囲気に包まれた。プロデューサーの佐藤は「この作品の企画を立ち上げたのは3〜4年前。コロナ禍を経て、ふるさとに対する思いが強くなり、この映画を企画しました。ロケ地の皆さんに観ていただけることが何より嬉しいです」と感謝を述べた。
映画の見どころについて聞かれると、岸監督は「気仙沼のおいしい料理がたくさん登場します。特に菅田将暉さん演じる晋作が料理を食べるシーンや、井上さんが地元の人に負けない包丁さばきを披露する場面に注目してほしい」と、話題になった井上の「高速『なめろう』づくり」シーンを絶賛。気仙沼の人々を前に「プレッシャー!」と、井上が監督の言葉を遮る場面も。ヒロイン百香のように、普段から料理をされていますか?という質問に対して、井上は「料理は割とするんですけれども、普段タコを丸ごと1匹茹でることはないので……(笑)、今回初めて挑戦しました。タコの足が丸まる様子を見て驚きました。とても貴重な経験でした」と語った。

プロデューサーの佐藤からは「宮藤官九郎さんが故郷・宮城を舞台に描いた作品で、(地元の)皆さんの目にはどう映るのか……というのが心配ではあるけれど、故郷への愛情たっぷりの脚本が魅力です」とコメント。そして「菅田さんのタコとの格闘シーンも必見です」と紹介すると、井上が「タコは重要ですね。いい仕事してくれました」と意外な『脇役』の存在を振り返った。
気仙沼弁にチャレンジする際、どんなことを大切にしたか?という質問で、井上は「この物語が始まるのが2020年。東日本大震災から9年間の間、百香はどんな思いで海を見ていたのかなということをただひたすら想像していました。気仙沼に来てからは、移動中も、現場でも海がよく見えるので、ずっと海を眺めていました。休みの日にも、(気仙沼の)大谷海岸に行ったんです。そこでも1日海をずっと見ていて……途中フカヒレラーメンを食べましたが(笑)、ずっと海を見ながらふと思ったのが『時間が解決するものは、ほんのささいなことで、寂しさは深くなるもの』なのかなぁと。笑えるシーンはたくさんあるんですけれども『寂しさの深さ』を大事にしようと常に意識していました」と撮影当時を思い出しながら語った。そんな姿を目の当たりにした小野寺は「キャストの皆さんが気仙沼の言葉を一生懸命学び、作品に落とし込もうとしていた姿勢に感動しました」と井上含めキャストに対する思いを伝えていた。また、小野寺自身は劇中では「東京の人」の役でも参加。その時のことについて、井上は「(ずるさんは)普段、私たちのセリフの方言をチェックしてくれるんですけど、本人は東京の人としてしゃべる役なので、むしろ自分は方言が出ないようにと、焦るほどどんどん訛ってしまう、ということがありました(笑)。焦ると方言が濃くなるんだなと。それを見て勉強になりました! ぜひ、どこにずるさんが出ているかもチェックしてみてください」と紹介。
特に気仙沼弁で難しかった箇所について聞かれると、井上は「百香ちゃんは、気仙沼弁の訛り具合も可愛らしく……といっても、気仙沼弁が可愛らしくないと言うわけではないですよ。1箇所だけ、コテコテに方言を出すとシーンがありまして『さんみぃがら、芋煮食べっぺす』と言うところなんです。その部分、ずるさんはすごく気合いが入っていて。『さんみぃ、です! 真央さん!』と熱のこもった指導が入っていました」と紹介。その流れで、その場で小野寺が「ネイティブ気仙沼弁」を披露し、会場を沸かせた。
最後に、映画を観る皆さんへのメッセージとして、岸監督は「外から見ると東北の風景は本当に美しい。故郷を舞台にした映画がどのように映るのか、じっくり観てほしい」と、改めてロケ地気仙沼を讃えた。井上は「たくさんの美しい景色やおいしい食べ物が詰まった作品。全国の皆さんが自分の故郷を思い出せるような映画になれば嬉しい」と語った。小野寺は「気仙沼弁って躍動感があって面白い言葉だなと改めて思いました。それを気仙沼の人ではない俳優さんが演じると、また違った面白さがあると思います」と話すと、来場者も大きく頷いていた。佐藤プロデューサーは「この作品は、この後台湾で劇場公開されます。東北あるあるがいろんな国でどんな反応をされるかというのを見届けたいと思っています」と今後の展開についても触れた。
舞台挨拶の最後には、気仙沼市の菅原市長と気仙沼市観光キャラクターの海の子ホヤぼーやから、花束が贈呈され、会場は温かい拍手に包まれた。また、映画公開に合わせて開催されていた「サンセット・サンライズ展」の開催期日が、3月末までの予定から6月末まで延長されることが菅原市長から発表された。
ホヤぼーやの登場により、最後のインタビューとして、登壇者の「お気に入りのホヤぼーやグッズ」について尋ねられると、岸監督は「撮影中ずっと愛用しているバッグにホヤぼーやの缶バッジを4つつけていました」と語り、井上は「『おしゃべりホヤぼーや』(こちらがしゃべった音声を言い返すぬいぐるみ)を最終日にいただき、同じくいただいた気仙沼の日本酒を飲みながら、ぬいぐるみに『お疲れさまでした』と言ったら『お疲れ様でした!』と返してくれて(笑)。早速次の日買って、友人の子どもにプレゼントしました。今も、お買い物に行く時はいつもそのおしゃべりホヤぼーやを抱えてくれているそうです」というエピソードを明かした。さらに小野寺は「家の鍵に木彫りのホヤぼーやをつけています」となかなかの「渋い」木彫りグッズを紹介。佐藤は「ステッカーをたくさん買ってパソコンに貼っているのですが、(ホヤぼーやの)知名度が高く、いろんな方に声をかけられます」と、それぞれの『ホヤぼーや愛』も披露。その後、来場者向けの写真撮影タイムも設けられ、暖かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
今後、シカゴで開催されるAsian Pop-up Cinemaやローマで開催されるAsian Film Fetivalなど世界の映画祭への参加、4⽉2⽇より台湾での上映がスタートすることが決定した映画『サンセット・サンライズ』。気仙沼の魅⼒がたっぷり詰まったこの作品を通じて、世界中の⼈たちに気仙沼の美しい⾵景や温かい⼈々に触れる機会となることを願いたい。
公開表記
配給:ワーナー・ブラザース映画
全国公開中
(オフィシャル素材提供)