
レオス・カラックスの記憶と思考に呑み込まれる! 映画『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』が4月26日(土)よりユーロスペースほかにて全国順次公開となる。
この度、グラフィックデザイナー・大島依提亜によるアナザービジュアル、イザベル・ユペール、尾崎世界観、伊賀大介の著名人コメント、そして3月下旬の来日中に開催されたレオス・カラックス監督によるQ&A先行上映イベントの動画が解禁となる。「ゴダール監督の死去とウクライナ戦争がこの映画の動機になったのか?」など、メディアの前に立つことの少ないカラックス監督が日本の観客の質問に真摯に答える貴重な映像だ。
100%カラックス映画、心揺さぶる自画像
レオス・カラックスの新作『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』。「これは私ではない」と題されたセルフ・ポートレート、カラックスが初めて自ら編集しためまいのようなコラージュ。「鏡を使わず、後ろ姿で描かれた」自画像。子どもの嘘の始まりのような「僕じゃない」という言い訳――。
2024年のカンヌ国際映画祭プレミア部門で初公開され、大きな注目と関心を集めた本作は、ルモンド紙が「五つ星・傑作」としたのを始め、「ゴダールの精神的後継者による心揺さぶるエッセイ」「カラックスのとてつもない宇宙」と高く評価された。アメリカでは秋のニューヨーク映画祭で「多彩なヴィジュアル・スタイルのシネ・エッセイ」「2024年の最も颯爽とした映画」と高評が続き、同映画祭に参加していたイザベル・ユペールも「100%レオス・カラックス映画。この映画にとても心を動かされた」と語っている。
イメージと音の奔流、間断なく入る文字・声・音楽。次々と引用される映画・写真・動画。カラックスの記憶と思考の中に呑み込まれる、魔法のような42分。
パリの現代美術館ポンピドゥ・センターはカラックスに白紙委任する形で展覧会を構想していたが、「予算が膨らみすぎ実現不能」になり、ついに開催されることはなかった。その展覧会の代わりとして作られたのが『ITʻS NOT ME イッツ・ノット・ミー』である。
ポンピドゥ・センターからの問いかけは、カラックスの今いる位置を聞いたものだったが、カラックスはそれをもっと根源的に捉え直し、自分がどこから来てどこへ行くのかという答えのない謎に地の底から響くような低い声で口籠もりながら語ってゆく。家族について、映画について、20世紀と独裁者と子どもたちについて、死者たちについて、そして「エラン・ヴィタル(生の飛躍、生命の躍動)」(ベルクソンの言葉)について。ゴダール(1930-2022)の後期のエッセイ・スタイルへのオマージュではあるものの、ゴダールが思索的・分析的なのに対し、カラックスはずっと夢想的・連想的にみえる。ホーム・ビデオから映画、音楽、写真とさまざまなジャンル、フォーマットの映像を夢の断片のようにコラージュしながら自身のポートレイトをプライベートにダイレクトに描く。そこにはストーリーも結論もないが、至る所に見る者の心を揺さぶる声や瞬間がある。難民の子どもの遺体に重なるジョナス・メカスの声。留守電に残されたゴダールの伝言。娘のナスチャがピアノで奏でるミシェル・ルグランの「コンチェルト」のテーマ。主観ショットで捉えられた『汚れた血』のジュリエット・ビノシュ。『ポーラX』のギョーム・ドパルデュー(1971-2008)とカテリナ・ゴルベワ(1966-2011)。盟友だった撮影監督ジャン=イヴ・エスコフィエ(1950-2003)への献辞。その後で、不意に訪れる驚嘆すべき素晴らしい終幕――。
すべてが親密で私的で詩的なカラックスからのメッセージだ。
この度、レオス・カラックスを敬愛するミュージシャンで作家の尾崎世界観、スタイリストの伊賀大介からコメントが到着。そして、カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した『ピアニスト』や、アカデミー賞®主演女優賞にノミネートされた『エル ELLE』など、フランスを代表する国際派女優、イザベル・ユペールがニューヨーク映画祭参加時にインタビュー誌で語ったコメントも届いた。
コメント
イザベル・ユペール(女優)
本当に驚くべき、清々しい映画で、言葉の最良の意味で“遺産(相続財産)”と呼ぶべき作品。ゴダールを随所に感じるけれども100%レオス・カラックス映画だと思う。私はこの映画にとても心動かされた。
尾崎世界観(ミュージシャン・作家)
画面から連射されるいくつもの問い。そのどれもが、手にした途端、あっさり断ち切られる。そして、また次の問いが始まるまでの一瞬の何かが、頭の深いところに刻み込まれる。まるで脳の奥でうがいをするような、そんな感じ。
伊賀大介(スタイリスト)
レオス・カラックスが撮れば、それが42分でも 125分でも、等しく忘れられない映画体験になってしまう。
あわせて今回解禁となったアナザービジュアルは、数々の名作映画、巨匠作品のビジュアルデザインを手がけてきたグラフィックデザイナー・大島依提亜が特別に制作。不眠症のカラックスがベッドに腰かけているカット、ベビー・アネット、盟友ドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ、愛犬、娘ナスチャと稲妻、ウクライナの女性活動家オクサナ・シャチコのトップレス抗議活動、『ポンヌフの恋人』の撮影風景、そして目と「REGARD DES DIEUX」の文字といった画像で構成され、「頭の中も人生もカオスだ」と語るカラックスの思想と記憶がコラージュされた本作が見事に表現されている。大島依提亜は、「一見すると、ジャン=リュック・ゴダール晩年の怒涛の音と映像のスタイルを“細かすぎて伝わらない”レベルで再現しているかのように思える。しかしそこはカラックス、あらゆる場面にみなぎる圧倒的映像美によって、さらにブーストし、唯一無二の映画に仕上げてしまった。そんな物量と精度(に対峙するには40分が限界じゃなかろうか)をアナザービジュアルに込めました」とコメントを寄せた。アナザービジュアルは、大判ポストカードで全国の上映劇場にて初日来場者プレゼント(数量限定)として配布予定。
そして3月下旬の来日時に開催されたQ&A先行上映イベントでの映像が解禁!

「もともとは美術館に10分ほどの自画像的な短編を頼まれたんです。その展覧会がなくなってしまった。でもひとりで編集するのが好きだったんです。家で映画をつくるそのプロセスが。ホーム・ムービーみたいで。犬や娘に囲まれて」と本作の成り立ちについて語り、「戦争がおこりゴダールが死を決意した。たぶんこの映画にも大きな影響を与えている」と観客からの質問に答えたほか、「好きな表現方法を通して自分自身を見つめるということをしたらいいと思う。自分をとりまく世界もね」「ノスタルジックになるのは好きじゃない。むしろ怒っていたい。激怒していたいんです」「自分の頭の中も人生もすごくカオスだと思っている。カオスの中で生きていると出会いがあるんです。そのカオスを共有し理解してくれる人が出てくる。映画というものはひとりで作れるようなものではないんです。誰か良い人に会うチャンスをいつも探している」「この映画が特別なのはフィクションではないから。全ての始まりであるカオスが生きたまま描かれている」など、メディアの前に立つことの少ないレオス・カラックス監督が日本の観客の質問に真摯に答える貴重な映像となっている。


SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSにて『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』公開記念フェア開催!
奥渋谷にある本のセレクトショップ。書籍だけでなく雑貨や書店員がチョイスした古着も取り揃えている渋谷のカルチャー発信地だ。映画『IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミー』の公開を記念して、関連書籍やTシャツ、ビンテージポスターなどレオス・カラックス過去作の公式グッズを集めたフェアを開催する!
【開催期間】4月26日~
【開催場所】SPBS本店 東京都渋谷区神山町17-3 テラス神山1F 03-5465-058
https://www.shibuyabooks.co.jp/spbs/(外部サイト)
公開表記
配給:ユーロスペース
2025年4月26日(土)よりユーロスペースほか全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)